注目の本

中原中也

中原中也


その重きメルヘン

倉橋健一 著 / 陶原葵 解説

1992年に刊行された幻の名著『抒情の深層――宮澤賢治と中原中也』(矢立出版)のうち中原中也の部分を独立させ、あらたに関連文献を追加し、陶原葵氏による解説をくわえて復刊する。第二次世界大戦末期、戦地に向かう学徒兵が最後の一日を中也の『山羊の歌』をむさぼり読むことに費やしたように、その抒情性が読み手の自由を誘い込む希有の詩人中也の詩の息吹を伝える会心の読解と論述。

思考することば

思考することば

大岡信 著 / 野沢啓 編・解説

日本の古典文学論をはじめ現代詩の世界でも詩と詩論によって中心となって活動し、晩年は『折々の歌』などで啓蒙的な役割もはたした大岡信は、若いときから戦後詩の主流だった鮎川信夫をはじめとする『荒地』派世代の主導する詩のありかたに疑義を呈し、みずからの同世代を感受性の王国の世代として称揚し、活発な詩論活動を展開して広い意味での戦後詩をリードした。その活動の初期において「ことば」そのものの創造性をめぐって本質的な問題点を提起したが、時代に先んじすぎていたためか、その深い洞察が広く理解されることなく終わった。その大岡の珠玉のことばへの洞察を集録して生前の大岡の問題意識を継承しようとするコンパクトな一冊。

詩的原理の再構築

詩的原理の再構築


萩原朔太郎と吉本隆明を超えて

野沢啓

萩原朔太郎『詩の原理』と吉本隆明『言語にとって美とはなにか』という近代詩以降の二大理論書を徹底的に読み解き、その理論的問題点を剔出し、言語隠喩論的立場から根底的な批判をおこなう。吉本表出論の虚妄性を暴露し、その意識言語論的な意識の優位性でなく、詩的言語における言語の隠喩的創造性、世界開示性にもとづく先行性を主張し、「言葉があつて、詩人が生れてくる」という朔太郎の詩の原理を確認する。『言語隠喩論』『ことばという戦慄――言語隠喩論の詩的フィールドワーク』につづく言語隠喩論三部作の完結篇。

好評既刊

宮澤賢治

宮澤賢治


二度生まれの子

倉橋健一

1992年に刊行された幻の名著『抒情の深層――宮澤賢治と中原中也』(矢立出版)のうち宮澤賢治の部分を独立させ、あらたに関連文献を追加し、著者の長い「あとがきに代えて」とたかとう匡子氏による解説をくわえて復刊する。みずからの存在と書くことの意識をめぐって切迫する賢治の「修羅」とはいかなるものであったのか、妹トシの死をめぐる葛藤やさまざまな童話の分析など、コンパクトながら数多い賢治論のなかでも白眉の一冊。

言語隠喩論

野沢啓

言語における隠喩的本質とはどういうものか。さまざまな哲学的・思想的知見を渉猟するなかから、詩人でもある著者が詩の実践をとおして言語の創造的本質である隠喩性を明らかにする。これまでのどんな隠喩論とも詩的言語の研究とも異なる、詩の創造的瞬間の現場への考察から言語そのものの構造をとらえようとする、これまで世界の誰も試みたことのない詩人による実践的言語論。藤井貞和氏も推奨の力作評論。