言語隠喩論
野沢啓 著
シリーズ : ポイエーシス叢書
言語における隠喩的本質とはどういうものか。さまざまな哲学的・思想的知見を渉猟するなかから、詩人でもある著者が詩の実践をとおして言語の創造的本質である隠喩性を明らかにする。これまでのどんな隠喩論とも詩的言語の研究とも異なる、詩の創造的瞬間の現場への考察から言語そのものの構造をとらえようとする、これまで世界の誰も試みたことのない詩人による実践的言語論。藤井貞和氏も推奨の力作評論。
序章 隠喩の発生
ことばの発生の歴史/ことばが発生する機序/ヴィーコの詩的想像力/小括
第一章 世界という隠喩
詩は散文に先行する/哲学は詩を説明するか?/トピカとクリティカという視角/詩は制作である/身分け=言分け、そして世界へ/あらためて世界へ
第二章 隠喩の暴力性
未知のものへの詩的構想力/詩のことばの暴力性/ハイデガーにおける詩と詩人の位置/ヴィトゲンシュタインと言語の問題
第三章 隠喩の創造力
詩の批評の意味/石原吉郎という位置/現代詩のなかの隠喩論/詩と言語哲学のかかわり
第四章 詩を書くことの主体的選択
詩の原理論的考察の必要/書く主体とは何か/隠喩は誰にとって価値があるのか/隠喩とはどんなものか――アリストテレスの定義/修辞学の再興
第五章 レトリックから言語の経験へ
詩のことばの隠喩性とその広がり/みずからの原点を穿つこと/書くことの戦慄/レトリックという発見的認識
第六章 詩作とはどういうものか
言語隠喩論の中間総括/隠喩理解の平板な思い込みの誤り――レイコフ/ジョンソンの隠喩論/ロマン・ヤコブソンの隠喩/換喩二元論への応答
第七章 詩という次元
世界という次元/詩のことばという次元/言語意識という次元
第八章 言語の生命は隠喩にある
詩と詩論のはざまから/詩と哲学の接近と訣れ/吉本隆明の喩法論批判/詩を書くことの定義づけ/リクールの隠喩論
終章 言語隠喩論の原点としてのデリダ隠喩論の再検討
現実をそのまま書けるという幻想/詩のように詩論を書くこと/デリダの根源的隠喩論/「白い神話」という難題/おわりに
あとがき
引用文献一覧 巻末
人名索引 巻末
野沢啓(のざわ・けい)
1949年、東京都目黒区生まれ。東京大学大学院フランス語フランス文学科博士課程中退。フランス文学専攻。
詩人、批評家。日本現代詩人会所属。
詩集――
『大いなる帰還』1979年、紫陽社
『影の威嚇』1983年、れんが書房新社
『決意の人』1993年、思潮社
『発熱装置』2019年、思潮社
評論――
『方法としての戦後詩』1985年、花神社
『詩の時間、詩という自由』1985年、れんが書房新社
『隠喩的思考』1993年、思潮社
『移動論』1998年、思潮社
『単独者鮎川信夫』2019年、思潮社(第20回日本詩人クラブ詩界賞)