思考することば
大岡信 著
野沢啓 編・解説
シリーズ : 転換期を読む
日本の古典文学論をはじめ現代詩の世界でも詩と詩論によって中心となって活動し、晩年は『折々の歌』などで啓蒙的な役割もはたした大岡信は、若いときから戦後詩の主流だった鮎川信夫をはじめとする『荒地』派世代の主導する詩のありかたに疑義を呈し、みずからの同世代を感受性の王国の世代として称揚し、活発な詩論活動を展開して広い意味での戦後詩をリードした。その活動の初期において「ことば」そのものの創造性をめぐって本質的な問題点を提起したが、時代に先んじすぎていたためか、その深い洞察が広く理解されることなく終わった。その大岡の珠玉のことばへの洞察を集録して生前の大岡の問題意識を継承しようとするコンパクトな一冊。
I ことばの力
新しい抒情詩の問題
言葉の問題
言葉の現象と本質――はじめに言葉ありき(抄)
『現代芸術の言葉』あとがき(抄)
言葉の出現(抄)
言葉の力
詩とことば
II 「てにをは」の詩学
現代芸術の中心と辺境(抄)
序にかえて――『うたげと孤心』まで
われは聖代の狂生ぞ
詩の「広がり」と「深み」――博識否定が語るもの
詩の「鑑賞」の重要性――語の読み方が語るもの(抄)
感受性の祝祭の時代
言葉のエネルギー恒存原理
[解説]詩人の責任と使命 野沢啓
大岡信(おおおか・まこと)
1931年、静岡県三島市に生まれる。2017年没。
東京大学文学部国文学科卒。東京芸術大学名誉教授。「日本の戦後詩を中心に担った詩人、批評家。詩集『記憶と現在』『悲歌と祝祷』『水府』『大岡信詩集』など多数。著書に『蕩児の家系――日本現代詩の歩み』『紀貫之』『うたげと孤心』『日本詩歌紀行』などのほか『折々の歌』がある。