ミケランジェロ
ジャック・ラング コラン・ルモワーヌ 著
塩谷敬 訳
「ダビデ」像、「ピエタ」像、システィナ礼拝堂天井画、そして壁画「最後の審判」など数多くの傑作を世に送ったルネサンス期の巨匠、ミケランジェロ。その作品がもつ一般大衆的側面や影響力、そして普遍的アンガージュマンについて、フランス文化政策のエキスパートと新進気鋭の美術史家が解明に挑む。カラー図版14点収録。
芸術よ、我らが望みを呼び覚まさんことを!
第1章 昼と夜
その名、それはミケランジェロ
第2章 神のごときアーティストの肖像
トスカーナ人の誕生 /信奉する伝記作家たち /宿命の意味 /レオナルド、ミケランジェロそしてラファエロ
第3章 開かれた工房
労働の神 /ドメーニコ・ギルランダイオのもとでの見習い期間 /サント・スピリトあるいは綿密な社会分析 /孤独の帝国 /『聖母子』
第4章 メディチ家の審美眼
素晴らしき庇護 /至福の庭園 /『牧神の頭部』、報われた果敢さ /楽園のような学校
第5章 雪の彫刻
並外れたなんでも屋 /『ケンタウロスの戦い』、彫刻の概要 /イル・マニーフィコの死または古き時代の終焉 /抗争とは無縁のボローニャで /ローマへの鍵『眠れるクピド』
第6章 最高傑作の『ピエタ』
ラファエレ・リアリオ枢機卿に仕えて /『バッカス』像、揺れる時代の象徴 /『ピエタ』、この信徳 /サヴォナローラへの熱狂あるいは虚飾の焼却
第7章 『ダビデ』、政治的イコン
放蕩息子の帰還 /民主主義的彫刻 /復活した大理石 /市民の象徴 /都市の中心で
第8章 対抗意識・この誠実な競争相手
支払うべき代価 /「トンド」、円形の美 /レオナルド・ダ・ヴィンチとの対峙 /対決のための二つの「闘い」
第9章 未完成の妙味
ユリウス二世または「墓廟の悲劇」 /『聖マタイ』、絶頂期の未完成作品 /『ラオコーン』または美の発掘 /断片の美学 /不完全性、保留の作品
第10章 システィナ礼拝堂、この死んだ絵
ローマの魅力 /絵の具の苦労 /高度な挑戦 /高度な空中曲芸 /人間のメカニズム /閃光を放つ花火 /近代手法
第11章 ひとつの墓碑から別の墓碑へ
必要なもの以外なにもない /時間、この焼き尽くす火 /二つの名家の板挟み /幾つもの仕事を同時に行なう不可能さ /ユリウス二世廟、魅了する墓碑 /メディチ家の墓、沈みゆく巨大建造物 /世間の騒音
第12章 最後の憂鬱
教養豊かな法王パウルス三世 /建築家、この夢の作り手 /哀愁と醜さ、これら沈黙の苦悩 /トンマーゾとヴィットリア、これら愛された者たち /『最後の審判』、この黒い太陽 /マニエリスム、打ちひしがれた後継者 /極端な美
第13章 神の黄昏
天才の結末 /non finito〔終わってはいない〕、戦略的なこの切り札 /死、この最終の手
訳者あとがき
年 譜
文献解説
《著者略歴》
ジャック・ラング(Jack Lang)
1939年フランスのヴォージュ県生まれ。パリ大学法学部およびパリ政治学院卒業。24歳で教授資格者となる。法学博士。1963年、「ナンシー国際演劇祭」の前身である「国際ディオニュソス祭」を創立し、実行委員長を務める。1972年、文化相ジャック・デュアメルの要請で国立シャイヨ劇場総支配人に就任。1981年、フランソワ・ミッテラン大統領が誕生すると文化相に抜擢され、1986年まで務める。1986年に社会党から初出馬して下院議員に当選。1988年のミッテラン再選にともない文化相に再任。1995年のシラク政権誕生で閣僚を退くまでに、革命200年担当相、情報担当相、および国民教育相などを兼務。1994年に欧州議会議員に転出するが、1997年ふたたび下院議員に当選。1989年から2000年までブロワ市長を兼務し、その後パ=ドゥ=カレ選出の下院議員を務めたが2012年の国民議会議員選挙で落選、現在はアラブ世界研究所(IMA)理事長。主要著書に『国家と劇場』L'État et le Théâtre、『明日女性は』Demain, les femmes、『マルローへの手紙』(未来社刊)、『フランソワ一世』François Ier、『ロラン・ル・マニフィック』Laurent le Magnifique、『フランスのための新しい政治体制』Un nouveau régime politique pour la France、『見捨てられた学校』L'École abandonée. Lettre à Xavier Darcos、『ネルソン・マンデラ』(未來社刊)、『フランソワ・ミッテラン断章』François Mitterand. Fragments de vie partagée『ルーヴル美術館の闘い』(未來社刊)など多数。
コラン・ルモワーヌ(Colin Lemoine)
美術史家、美術評論家、展覧会運営委員。パリ第四大学卒。現在はブールデル美術館の彫刻部門責任者。多くの講演、さらにはジャコメッティ、ロダン、アンリ・フォシィヨンの関連記事や展覧会運営委員を務める。現代美術運動の美術顧問であり、ファイヤール出版社の美術史双書を指導している。2016年にパリで開催された「ベートーヴェン展」の運営委員。主要著書に『ブールデル』Bourdelle、『アントワーヌ・ブールデル、現代性の渡し守』Antoine Bourdelle, passeur de la modernité、『ロダンとブールデル――往復書簡集』Rodin/Bourdelle,correspondance(共著)、『ブールデルに照らしたジャコメッティ』Giacometti devant Bourdelleなど。
《訳者略歴》
塩谷 敬(しおのや けい)
1944年静岡県生まれ。中央大学仏文科卒。1972年にフランス政府給費留学生として渡仏、1981年帰国。パリ大学大学院演劇研究科にて博士号取得。パリで出版された著書に対してアカデミー・フランセーズから1987年度のロラン・ド・ジュヴネル文学賞が授与される。静岡大学人文学部教授を経て現在は同大学名誉教授。翻訳に『マルローへの手紙』『ネルソン・マンデラ』『ルーヴル美術館の闘い』(未來社)など。