家郷のガラス絵
出雲の子ども時代
長谷川摂子 著
「ふうん、そおで、おじいちゃん、どげ思った?」
次世代へと遺され、あるいは受け継がれていく「語ること」の豊かさと不思議さ、そして人生の滋養となる子ども時代の体験をみつめる、ふるさと回帰の旅。
『とんぼの目玉――言の葉紀行』につづく第2エッセイ集。(イラスト:新井薫)
「自分の子ども時代の風景のガラス絵を一枚一枚楽しみながら拾い上げて書いていくのも年齢を重ねてきた余得かもしれません。子どもだった半世紀前の、貧しくも豊かだった裏日本の小さな田舎町のいきいきした暮らしの面影がこの余得の中に浮かんでくれば幸いだと思っています。さらに、読者の皆さんがもっている幼いころのガラス絵がこの本と連動してつぎつぎ浮かび、人生列車の窓の光がこのエッセイと交錯すればこれ以上の喜びはありません。」――まえがきより
◆祖父の時代・父の時代
祖父の新婚旅行
明治の凧揚げ
祖父の信仰
大正の子どもたちの限界芸術
麗子叔母の一生
◆子ども時代
河豚と核家族
エビおっつあん
じゃぶじゃぶの話
野菜のピラミッド
天神さんの祭り
薬師さんの祭り
いじめられっ子のひとり革命
私の飴玉読書暦
◆ふるさと回帰
第二の自然としての小津映画
小津映画とフェルメール
小津の水平線
笠智衆の夫人、花観さんのこと
◆古典との出会い
頭の鬼門に鎮座まします化石、溶解のこと。
紫式部の目
長谷川摂子(はせがわせつこ)
島根県生まれ。絵本・童話作家。東京外国語大学卒業、東京大学大学院哲学科中退。保育士として働いたのち、夫の長谷川宏氏とともに学習塾を営む。2004年『人形の旅立ち』(福音館書店)で第19回坪田譲治文学賞、第14回椋鳩十文学賞、第34回赤い鳥文学賞を受賞。第一エッセイ集『とんぼの目玉――言の葉紀行』(未來社)のほか、絵本に『めっきらもっきらどおんどん』『きょだいなきょだいな』『みず』『おっきょちゃんとかっぱ』『さくら』など多数。評論に『子どもたちと絵本』(福音館書店)、翻訳に『美術の物語』(共訳・ファイドン)。昔話に「てのひらむかしばなし」シリーズ(全10巻・岩波書店)。