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啓蒙の射程と思想家の旅
田中秀夫 著
スコットランド啓蒙研究を専門とする著者の近年の研究成果からなる論文集。ヨーロッパ啓蒙思想の普及の歴史を、ヒューム、ルソー、アダム・スミスといった思想家たちの「旅」に注目して解き明かす。さらにアレントやハチスン、ジョン・ロックらの公共に関する思想を再読し、市民社会の構築へ向けて新たな課題を浮き彫りにするとともに、啓蒙思想の現代的可能性を追求する。「社会の医者」たらんとする思想史研究者が、社会を深く見すえた好著。
はしがき
第1章 ヨーロッパ啓蒙――共和主義と世界市民主義を中心に
1 啓蒙とはなにか
2 啓蒙の人間像――利己心と仁愛
3 自然法と共和主義
4 共和主義と公共性
終わりに
第2章 啓蒙思想家の旅
1 グランド・ツアの時代
2 スコットランド人の旅
3 ブリテンの自由とフランスの豪奢
4 ボズウェルの旅とコルシカ
5 学問共同体とアジールとしての大学
6 思想家の蔵書
第3章 大ブリテンの啓蒙――起源と文脈
1 啓蒙の起源
2 オーガスタン時代
3 アメリカ啓蒙と書物の寄贈
4 スコットランドの学問
第4章 啓蒙と野蛮――スコットランド啓蒙研究の可能性
1 現代思想のキャノンの投げかけるもの
2 啓蒙概念の拡散
3 スコットランド啓蒙研究の可能性
4 スコットランド啓蒙研究への日本の貢献
第5章 市民社会と徳――思想史的接近
1 問題設定とその起源
2 「市民社会」の概念と「市民」
3 civil societyは「市民社会」か――ロックの場合
4 civil societyからcivilized societyへ
5 「市民革命」と「市民的自由」の概念
6 市民的「徳」の概念
終わりに
第6章 啓蒙と改革――一八世紀研究の視座
1 思想史研究者として
2 啓蒙・共和主義・商業
3 「ポリティカル・エコノミー」の成立
4 啓蒙における改革
5 社交性とはなにか
6 公平な観察者と利己心の制御
第7章 自己愛の時代の始まり――スミスとルソーの自己愛論
あとがき
田中秀夫(たなか・ひでお)
1949年生まれ。京都大学名誉教授、愛知学院大学経済学部教授。専攻はイギリス啓蒙思想史、社会・経済思想史。著書に『スコットランド啓蒙思想史研究』(名古屋大学出版会)『文明社会と公共精神』(昭和堂)『共和主義と啓蒙』(ミネルヴァ書房)ほか、訳書にポーコック『マキァヴェリアン・モーメント』(名古屋大学出版会)ヒューム『政治論集』(京都大学学術出版会)フォーブズ『ヒュームの哲学的政治学』(監訳、昭和堂)ほか。
公共性の構造転換
市民社会の一カテゴリーについての探究
ユルゲン・ハーバーマス 著 / 細谷貞雄 山田正行 訳
定価: 本体3,800円+税 ISBN: 978-4-624-01123-9 発行日: 1994年5月30日