遊撃とボーダー
沖縄・まつろわぬ群島の思想的地峡
仲里効 著
ジャンル : 哲学・思想 >> 現代思想
ジャンル : 哲学・思想 >> 社会思想・社会思想史
シリーズ : ポイエーシス叢書
1972年の日本「復帰」以前の沖縄を出自として首都東京での1968年以降のニューレフトや在日沖縄人運動を独自の立場から闘い抜いた世代がその後の沖縄にもたらした思想とは何か。いま現在の沖縄のさまざまな思想的トポスを縦横に論じ、文学や映画にまで通達する思考のダイナミズムを展開する沖縄のアグレッシヴな論客が切り拓く沖縄の思考の現在。アジアともつながる地政的なポジションを駆使して、停滞するヤマトの思考の地平にゆさぶりをかける異貌の論理が挑みかかる。現代中国の思想史研究家・孫歌氏との往復書簡も収録。
I 鏡の中の北、闇の奥のトピカ
一九六八年沖縄・夏の別れ歌――川満信一と伊礼孝の分水界
ガマから/ガマへ――沖縄戦後世代のオブセッション
ブルー・ヴァリアント――『聖なる夜 聖なる穴』の迷宮から
欲望された〈日本〉――作文と歌にみる模倣と鏡
II 遠方から、遠方への工作者
窓を開ければ――〈非〉と〈反〉の果てまでも
たった一つの〈此処〉、幾つもの〈彼処〉
「無の造型」から〈虚数〉の海まで
III 阿Qと琉Qと植民地的身体
流れる民、降りていく眼――『魚群記』に見る〈アジア的身体〉
貘を阿Qと言ってみたかった
死者たちの交差に萌えるもの
往復書簡(仲里効―孫歌) ?扎の思想と琉球共和社会憲法
IV アクロス・ザ・ボーダー
境界の映画、映画の境界――投影・分有・自立沖縄の夢
〈開かれた未完〉であり続けること――『モトシンカカランヌー』と異貌の沖縄
一九七二年のメロドラマ的構造――兄妹相姦のコロニアルな攪拌
仲里 効(なかざと・いさお)
1947年、沖縄南大東島生まれ。法政大学卒。批評家。1995年に雑誌「EDGE」(APO)創刊に加わり、編集長。主な著書に『眼は巡歴する』(未來社、2015年)、『悲しき亜言語帯』(未來社、2012年)、『フォトネシア』(未來社、2009年)、『オキナワ、イメージの縁(エッジ)』(未來社、2007年)、『ラウンド・ボーダー』(APO、2002年)、編著・共著に『沖縄思想のラディックス』(未來社、2017年)、『琉球共和社会憲法の潜勢力』(未來社、2014年)、『沖縄/暴力論』(未來社、2008年)、『沖縄の記憶/日本の歴史』(未來社、2002年)、『複数の沖縄』(西成彦・原毅彦編/人文書院、2003年)、『沖縄問題とは何か』(弦書房、2008年)、『沖縄映画論』(四方田犬彦・大嶺沙和編、作品社、2008年)などがある。映像関係では『嘉手苅林昌 唄と語り』(1994年)共同企画、『夢幻琉球・つるヘンリー』(高嶺剛監督、1998年)共同脚本、2003年山形国際ドキュメンタリー映画祭沖縄特集「琉球電影列伝」コーディネーター。