田中浩集 第三巻
カール・シュミット
田中浩 著
シリーズ : 田中浩集
〔第七回配本〕
主権者とは、例外状態にかんして決定を下す者である――
シュミット以上に妖しげな言葉を使う政治学者がいただろうか。「非常事態」、「友・敵」、「委任独裁」……。数々の用語はときに魅惑的な衝撃を与える。どうして彼は独裁の理論をうち立てたのか。本巻はシュミットの理論を包括的に取り上げ、当時の政治・社会状況に即して構造的に検討を加えることで、彼の理論への根本的批判を企図した、総合的なシュミット論である。
序
第一章 シュミット――全体国家論の思想構造
第二章 大統領の独裁とヴァイマル共和国の崩壊――憲法第四八条第二項(緊急命令権・非常権 限)をめぐる
第三章 「独裁」と「自由」――「委任独裁」と「主権独裁」
第四章 「神話」と「独裁」の政治理論――例外状態を前面に立てた「独裁」の正当化
第五章 政治の本質――保守主義の「敵・味方」論
補論一 全体主義
補論二 ファシズム
補論三 〈現代独裁論〉考――カール・シュミットの全体主義国家論をめぐって
補論四 「例外状態」と民主主義――「正常」と「異常」のダイナミズム
田中浩(たなか・ひろし)
1926年佐賀県生まれ、一橋大学名誉教授、聖学院大学大学院教授。政治学・政治思想。本シリーズ収録著作のほか、共訳書にホッブズ『リヴァイアサン』『哲学者と法学徒との対話』、シュミット『政治的なものの概念』『政治神学』など多数。