岸辺のない海 石原吉郎ノート
郷原宏 著
『季刊 未来』で16回にわたって連載され、好評を博した「岸辺のない海 石原吉郎ノート」に参考文献と詳細な年譜を追加して一冊にまとめた伝説の詩人の力作評伝。戦後、極寒の地シベリアに八年にわたって抑留され、苛酷な労働と非人間的な強制収容所生活で人間のぎりぎりの本質と死を見とどけた石原は、現代詩の世界のなかでも独得な詩情と透徹した世界観をもって生き抜いた。そうした特異な存在をめぐって、やはり本誌連載をもとにした『詩人の妻――高村智恵子ノート』で一九八三年のサントリー学芸賞を受賞した、詩人でもある著者の怜悧な筆致が縦横に展開され、鮮やかな刻印を残す。数多ある石原吉郎論の決定版。
処女作まで
戦後の意味
暗い傾斜
単独者の祈り
哈爾浜特務機関
シベリアへ
強制と共生
望郷
沈黙と失語
沈黙と失語(続)
恢復期
帰還
ロシナンテ
クラリモンド
俳人青磁
晩年
あとがき
参考文献
石原吉郎年譜
郷原宏(ごうはら・ひろし)
詩人・文芸評論家
1942年、島根県出雲市生まれ。早稲田大学政治経済学部新聞学科卒。元読売新聞記者。詩誌『長帽子』同人。74年、詩集『カナンまで』でH氏賞受賞。83年、評論『詩人の妻――高村智恵子ノート』でサントリー学芸賞受賞。2006年『松本清張事典決定版』で日本推理作家協会賞(評論部門)を受賞。その他の著書に『歌と禁欲』『立原道造』『詩のある風景』『清張とその時代』『物語日本推理小説史』『日本推理小説論争史』『乱歩と清張』『胡堂と啄木』など多数。