〈長詩〉遥かな「戦後教育」
けなげさの記憶のために
北田耕也 著
現代だからこそ、教育再生のために『山びこ学校』などの子どもたちの詩を通してあらためて教育のあり方をふり返り、原点から子どもの本姿を見つめ直したい。
「いのち」と向き合うすべての大人たちへ。
教育は、子どもたち一人ひとりが自らの内に人と世のよりよい未来を孕む文化であった。
教育基本法の「改訂」は、そういう「未来」や子どもたちの「文化」に対する政治の侵犯であった。「戦後教育」はその命脈を断たれた。制度のうえでも亡んだも同然である。
私はこれを弔詩のつもりで書いた。
しかし、それにもかかわらず、決して滅せぬもののあることをわきまえておきたい。それは子どもたち一人ひとりが持って生まれてきた命の底の「生命記憶」である。
(本文より)
一 「戦後教育」の初心
二 一少年の見た夢――「善さ」を競い合う世
三 生活綴方教育の二人――東井義雄と近藤益雄
四 「文化国家」から経済大国へ――忘れやすいわれら
五 現代の闇と光
北田耕也(きただこうや)
1928年、福岡県小倉市に生まれる。旧制・佐賀高等学校文科(中退)、同・武蔵高等学校文科卒。1954年、東京大学教育学部卒(社会教育専攻)。
早稲田大学、東京大学、駒澤大学兼任講師、東洋大学社会学部教授、明治大学文学部教授等を経て、1999年退職。明治大学名誉教授。
著書に『大衆文化を超えて――民衆文化の創造と社会教育』(国土社)『感情と教育――教育に希望を索めて』(国土社)『近代日本少年少女感情史考――けなげさの系譜』(未來社)『自己という課題――成人の発達と学習文化活動』(学文社)『明治社会教育思想史研究』(学文社)『「痴愚天国」幻視行・近藤益雄の生涯』(国土社)など。