公共善の政治学
ウェーバー政治思想の原理論的再構成
定価:本体4,500円+税
ISBN:978-4-624-30105-7
ISBN[10桁]:4-624-30105-6
発行日:2007年12月20日
判型:A5上製
ページ:334
Cコード:C0031
雀部幸隆 著
マックス・ウェーバーに政治学はあるのか、という素朴な批判に抗して著者は、その政治学がそれぞれの国の歴史的・地政学的諸条件にもとづく「公共善」の追求という観点から独自の政治学が存在し、それは西欧政治学の伝統に立脚するとともに現代政治学にも重要な視角を提供すると主張する。第二帝制期からワイマール期へかけてのドイツ政治に深くコミットしたウェーバーの現実的で柔軟な政治思想にあらためて光をあてた力作。
序 ウェーバーに政治学はあるか
一 ウェーバーにおける「政治的科学」への自意識
二 ウェーバーの「政治的科学」を現代にも通用する政治学として読む条件
三 本書の構成
第一部 ウェーバーの政治論説をどう読むか
一 ウェーバーにおける政治の枢要な位置
(一)ウェーバーの政治との深いかかわり
(二)ウェーバーの政治論説の読みにくさ
(三)ウェーバーの政治にたいする基本的立脚点
二 W・J・モムゼンのウェーバー批判
(一)モムゼンのウェーバー批判の基本視点
(二)モムゼンのウェーバー批判の結論と「われわれ」のディレンマ
三 ウェーバーのライヒ大統領制論にたいするモムゼンの批判とその問題性
(一)ウェーバーの大統領制論とワイマール憲法
(二)モムゼンのウェーバー大統領制論批判とその問題点
四 ワイマール末期の大統領政府体制をどう見るか
(一)大統領政府体制の不可避性
(二)国家の統治可能性を保障する唯一の手段としての大統領政府体制
(三)委任的独裁か主権的独裁か
結語
第二部 公共善追求の営為としての政治――ウェーバー的視点からの政治の原理的考察
はじめに
第一章 政治の基礎概二)契約説的国家観
(三)三段階委員会モデル
二 日本国憲法の政治思想史的立場:自然法的民主主義論の三位一体的観点
(一)日本国憲法前文および第四一条
(二)日本国憲法成立の事情
(三)自然法的民主主義論の三位一体的観点にたいする批判
(四)マックス・ウェーバーの自然法的公理主義批判
三 公共善論の三位一体的観点
(一)レース・プーブリカとは
(二)公共善論(レース・プーブリカ論)の三位一体的観点
(三)公共善論の三位一体的観点と議会民主制
第四章 法治国家的構成原理
一 法治国家、立憲制、立憲民主制
(一)法治国家
(二)立憲制
(三)立憲民主制
二 権利保障の理念
(一)理念的基礎
(二)カール・シュミットによる基本権の分類
(三)基本権の社会化
三 権力分立の原理
(一)権力分立の思想と理論:モンテスキュー『法の精神』、『ザ・フェデラリスト』
(二)立憲制と主権との関係
(三)行政府優位の現実
第五章 民主制
一 国家の統治形態の三類型:君主制、貴族制、民主制
二 アリストテレスの国制論
(一)定義:「正しい国制」と「堕落した国制」
(二) ウェーバーの政治ゲマインシャフト論――ウェーバー国家論の基底
はじめに
一 ウェーバーの国家観
(一)『職業としての政治』における国家の定義
(二)契約説的国家観からするモムゼンのウェーバー批判
(三)ウェーバーの国家アンシュタルト論――契約説的国家観とウェーバー
二 ウェーバーの国家成立論理解のための若干の前提
(一)ウェーバーの国家成立論の基底としての「政治ゲマインシャフト」論
(二)いわゆる「経済と社会」の編纂問題
三 結社とアンシュタルト――「カテゴリー論文」の若干の基礎範疇について
(一)「行為」
(二)ゲマインシャフト行為
(三)ゲゼルシャフト関係とゲゼルシャフト行為
(四)「諒解」
(五)アンシュタルトと団体
(六)アンシュタルトと目的結社
四 ウェーバーの「政治ゲマインシャフト」形成論
(一)政治ゲマインシャフトの定義
(二)政治ゲマインシャフトと諸ゲマインシャフト、政治ゲマインシャフトの特殊な地位
(三)政治ゲマインシャフトのアンシュタルト化
(四)政治ゲマインシャフトのアンシュタルト化の経路
補説一 ウェーバーの「諒解ゲマインシャフト論