追憶の政治哲学
ベンヤミンの歴史的唯物論
内村博信 著
ベンヤミンは1930年代の亡命期、パリのシュルレアリストたちと関係を築きながら、『パサージュ論』を構想し、複製技術論、ボードレール論、「歴史の概念について」などの作品を遺している。フロイトとマルクスの理論を結びつけ、映画のモンタージュの技法と無意識、近代の商品経済と「物神」との関係を探求し、「追憶」という概念をつうじてユダヤ教のメシアの理論を歴史の概念に適用しつつ「歴史的唯物論」を展開するベンヤミン思想を問う。
序
第一章 「複製=再生産技術」と無意識の「遊戯=活動空間」
1 全体性にたいする批判
2 無意識の機械装置としての映画と「遊戯=活動空間」
3 記憶と想起
第二章 十九世紀資本主義社会における幻像と目覚めの弁証法
1 十九世紀の商品経済と幻像(ファンタスマゴリー)
2 物神と物象化
3 「集団的意識」と目覚め
第三章 歴史的唯物論、歴史の物象化と「メシア的なもの」
1 近代の二律背反、進歩と永遠回帰
2 歴史主義批判、進歩主義批判
3 歴史的唯物論と「メシア的なもの」
終章
内村博信(うちむら・ひろのぶ)
1958年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)。千葉大学名誉教授、ドイツ文化・思想。著書に『政治と美学――ベンヤミンの唯物論的批評』(未來社、2024年)、『討議と人権――ハーバーマスの討議理論における正統性の問題』(未來社、2009年)、『ベンヤミン 危機の思考――批評理論から歴史哲学へ』(未来社、2012年)。共著に『感覚変容のディスクール――世紀転換期からナチズムへ』(平凡社、1992年)ほか。共訳書に『ベンヤミン・コレクション2』(筑摩書房、1996年)『ベンヤミン・コレクション7』(筑摩書房、2014年)ほか。