政治と美学
ベンヤミンの唯物論的批評
内村博信 著
カール・クラウスの論争術、ブレヒトの叙事演劇をつうじて、第一次世界大戦後の大衆社会を問い、ボードレールの抒情詩をつうじて近代大衆社会が誕生する根源史を探求するベンヤミン。激動の時代状況下、批評家として活動を開始し、亡命先のパリで反ファシズム運動とかかわり、研究・批評活動をつづけるベンヤミンの思想に迫る。続刊予定の『追憶の政治哲学――ベンヤミンの歴史的唯物論』とともに著者のベンヤミン論を集成する。
序
第一章 表現主義と暴露の技術としての唯物論的〈批判=批評〉
1 保守的ロマン主義と革命的ロマン主義への批判
2 クラウス論における「全人間的なもの」
3 クラウス論における「非人間的なもの」
第二章 新即物主義とブレヒトの叙事演劇』
1 新即物主義と「新中間層」
2 「叙事的なもの」とブレヒト演劇における「身振り」
3 生活諸関係の文書化と貧困化
第三章 「反社会的な者」のメランコリーとアレゴリー的志向
1 「複製=再生産技術」と大衆社会
2 ボードレール論における陶酔の弁証法的な意味作用
3 ボードレール論における「新しさ」への感情移入とアレゴリー的志向
終章
1958年生まれ。
東京大学大学院人文社会系研究科博士(文学)。
現在、千葉大学法経学部教授、ドイツ文化・思想。
著書に『討議と人権』(未來社、2009年)、『ベンヤミン 危機の思考――批評理論から歴史哲学へ』(未来社、2012年)、共著に『感覚変容のディスクール――世紀転換期からナチズムへ』(平凡社、1992年)ほか。共訳書に『ベンヤミン・コレクション2』(筑摩書房、1996年)『ベンヤミン・コレクション7』(筑摩書房、2014年)ほか。