脱成長(ダウンシフト)のとき
人間らしい時間をとりもどすために
セルジュ・ラトゥーシュ ディディエ・アルパジェス 著
佐藤直樹 佐藤薫 訳
私たちのスローガンはむしろ、「より良く生きるために、働く量を減らそう」ということなのです。(本文より)
より豊かな生活を求めて「経済成長」を続けてきた現代社会。しかし、行き過ぎた経済開発は自然環境を破壊し、より多く働くことを強制づける資本主義によって人びとの生活時間も労働に圧迫されつつある。
このまま「経済成長」を維持することはできるのだろうか。仮に続けられるとして、それが未来のためになるのだろうか。
人間としての豊かな生活とは何か。「脱成長」の旗手ラトゥーシュとアルパジェスが「脱成長」のエッセンスを解説し、「成長」からの決別を説く。
序 章 いまこそそのとき
第1章 時間の多様性の喪失:方向転換の必然性
第1節 生産至上主義の名のもとに押しつぶされた時間
第2節 強制されたスピード
第3節 製品寿命の人為的操作
第4節 永遠を現在に:持続可能な発展
第5節 仮想的な時間
第6節 時間を売るということ
第2章 本来の時間をとりもどす
第1節 時空間の再構築
第2節 より良く生きるために働く量を減らそう
第3節 隔たりを減らし、ゆとりを見出す
第4節 地域活動の再発見
第5節 時間を元に戻す
終 章 同じ世界で別の生き方をする
語句解説
〈著者略歴〉
セルジュ・ラトゥーシュ(Serge Latouche)
1940年生まれ。フランスのオルセー大学経済学名誉教授。経済思想。「脱成長」思想の先導者として知られる。邦訳に『経済成長なき社会発展は可能か?』(中野佳裕訳、作品社、2010年)、「簡素に生きる〈脱成長〉の道」(マルク・アンベール/勝俣誠編著『脱成長の道』、コモンズ、2011年)、『〈脱成長〉は、世界を変えられるか?』(中野佳裕訳、作品社、2013年)。
ディディエ・アルパジェス(Didier Harpagès)
リセの経済学・社会学教授。生態学、政治経済学。指導教官ラトゥーシュのもとで、1970年に学位取得(リール大学、経済学)。「経済成長」や「持続可能な発展」に対する批判をおこなっている。著書にQuestions sur la croissance (Sang de la Terre-Medial, 2012)。
〈訳者略歴〉
佐藤直樹(さとう・なおき)
1953年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。理学博士(東京大学)。光合成、植物機能ゲノム学、生命基礎論。著書に『エントロピーから読み解く生物学』(裳華房、2012年)、『40年後の「偶然と必然」』(東京大学出版会、2012年)ほか。翻訳にクリストフ・マラテール『生命起源論の科学哲学』(みすず書房、2013年)ほか。
佐藤薫(さとう・かおる)
1992年生まれ。東京工業大学工学部社会工学科在学。日仏の労働環境の違いを計量経済学的に研究中。翻訳にアニック・ペロ/マクシーム・シュワルツ『パスツールと微生物』(共訳、丸善、2013年)。