哲学原理の転換
白紙論から自然的アプリオリ論へ
加藤尚武 著
クローン・代理出産・脳死ほか過去に例のない倫理問題について、われわれはいかにして理性的な合意を形成できるか。ヘーゲル研究者として数々の業績を残し、生命倫理学・環境倫理学を提唱した先駆者として知られる氏が、いまあらためてヘーゲル思想の功罪を問い、現代を生きる哲学者の使命を論ずる。
序章 世界の現状と哲学の現状
第1章 技術革新と倫理
第2章 違法性の根拠と自由主義
第3章 哲学の国と周辺の国々
第4章 プラトン主義と生命・環境・地域紛争
第5章 ヘーゲルとマルクス
第6章 ヘーゲル体系論の四つのモチーフ
第7章 白紙論崩壊とアメリカに登場したヘーゲル主義
第8章 心身論史――「離存」問題の跡をたどって
加藤尚武(かとうひさたけ)
1937年生。哲学者、京都大学名誉教授、人間総合科学大学客員教授。著書に『ヘーゲル哲学の形成と原理――理念的なものと経験的なものの交差』(1980年、山崎賞)『バイオエシックスとは何か』(1986年)『哲学の使命――ヘーゲル哲学の精神と世界』(1992年、和辻哲郎文化賞)『二十一世紀のエチカ――応用倫理学のすすめ』(1993年、以上、未來社)『現代倫理学入門』(1997年、講談社)『脳死・クローン・遺伝子治療――バイオエシックスの練習問題』(1999年、PHP研究所)『戦争倫理学』(2003年、筑摩書房)『新・環境倫理学のすすめ』(2005年、丸善)『災害論――安全性工学への疑問』(世界思想社、2011年)ほか、共訳書にヘーゲル『懐疑主義と哲学との関係』(1991年、未來社)、シューメーカー『愛と正義の構造――倫理の人間学的基盤』(晃洋書房、2001年)ほか多数。