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ベンヤミン 危機の思考
批評理論から歴史哲学へ
内村博信 著
破壊的暴力、危機的状況へとみずからを曝すことによってのみ、〈生〉は束縛から解放される。連続性のなかであらかじめ決定された現在を否定し、事物のうちにひそみ決定を待つ、あやうくはかない断絶の徴候を〈現在〉として構成するために、批判=批評が果たすべき使命とはなにか。ハーバーマス、デリダ、ドゥルーズらの考察を参照しつつ、初期ベンヤミンを精読する。
第一章 芸術批評の理論と作品の概念
1 〈詩作されたもの〉の概念
ヘルダーリン論における「同一性の法則」
「形姿の原理」と「オリエント的なもの」
2 〈神話的なもの〉の概念
ゲーテの〈デモーニシュなもの〉とカントの道徳律
美の仮象と憂鬱、「死の欲動」
市民的自由と宥和の仮象
3 芸術批評の理論
〈反省=反射〉の概念
作品の概念と〈批判=批評〉
無意識の創造性
第二章 法の概念と近代悲劇
1 法と法の力
法と法の力とのあいだの行為遂行的矛盾
「境界=限界」侵犯と神話的暴力
行為遂行的トートロジーの暴力
2 ギリシア悲劇と近代悲劇における運命の概念
ギリシア悲劇における罪と贖い
近代悲劇における「亡霊的なもの」
主権論
3 正義と〈神的なもの〉の概念
「手段の正当性」と「目的の正しさ(正義)」
正義と「最終的解決」に関するデリダの読解
神話的暴力と神的暴力
第三章 言語理論と歴史哲学
1 伝達可能性の逆説性と表現の潜在性
言語の伝達可能性の逆説性
伝達と表現
2 固有名と翻訳可能性
諸言語の「親縁性」と「語」
固有名の指示と一般名の指示
3 歴史記述の方法としての理念論
理念と名(固有名)
「自然-史」の概念
終章 批判=批評と歴史哲学
内村博信(うちむら・ひろのぶ)
1958年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。現在、千葉大学法経学部教授、ドイツ思想専攻。著書に『討議と人権』(未來社、2009年)、共訳書に『ベンヤミン・コレクション2』(筑摩書房、1996年)ほか。