2009年9月アーカイブ

 Windowsをさらに使いやすくするためには、Windowsがもともともっている機能を有効に活用し、さらには主要なアプリケーションの隠れた機能を十分に引き出したり可能ならカスタマイズをくわえることは言うまでもない。そういうちょっとした工夫が日常的な仕事のレヴェルでどれだけ効果的かは、これまで述べてきたところからだけでも推測してもらえるだろう。面倒がらずにそうした研究もしてみることをお奨めする。そうした小技をテーマにしたマニュアル集などもいろいろ刊行されている。この連載はそうした小技についての情報をあくまでも執筆者・編集者という種族のひとたちのために整理しているにすぎない。仕事柄、同業者たちが手際の悪い仕事ぶりをしているのをみると、よけいなお節介をしてみたくなるのがわたしの性分なのだ。
 さて、わたしが執筆と編集の両方において絶対に必要と思うツールやユーティリティがいくつかある。まずいくつかのテキストエディタが必要であることはすでに述べた。
 つぎに必要不可欠なのが、バックアップ・ユーティリティである。自分が作ったデータは自分で守らなければならない。OSなら再インストールできるし、各種アプリケーションやプログラム類は何度でも再インストールし直せばいい。ただ、それらで作った自分独自のデータだけは何重にもバックアップしておかなければならない。こうしたバックアップをするためには、別項で触れるように、できれば内部に別のパーティションをもち、さらには外部メディアにバックアップ・フォルダを作り、バックアップ・ユーティリティを使って同期させて保存しておく必要がある。これは手間をたいしてかけるわけではなく、そのわりには効果絶大なのである。こうしたバックアップをしていないひとの仕事を見ていると、その危険に気づいていないことにこちらが恐ろしさを感じるほどである。Windows用のバックアップ・ユーティリティとしてはさしあたりDiskMirroringToolというフリーウェアのツールをお奨めする。このソフトの使い方については別項で説明する予定である。
 さらに、原稿を書いたり編集したりするうえで必携と思われるユーティリティがクリップボード・ユーティリティである。これはどういう機能をもつものかというと、コピーしたりカットしたりした文字データを繰り返し使えるようにするものである。そう言うと、なんだそれだけか、と思われるかもしれないが、これがどっこい馬鹿にならないのである。通常、クリップボードにはコピーしたりカットしたりすると最新の文字データがひとつだけ記録されている。つまり、なにか新しい文字データをコピーしたりカットするとそれ以前の文字データは消えてしまう。だからコピーまたはカットの履歴が残っていれば、それを呼び出したり、貼り付けたりすることができるのである。秀丸エディタのようにクリップボード履歴をとることのできるツールもあるが、一般にはクリップボード・ユーティリティというものを使えば、どんなツールにおいてもクリップボード履歴を使うことができるのである。そしてこれらの履歴は通常はパソコンの電源が切れるとともに消去されることなく、再起動後も履歴を覚えているようにすることができるのである。したがって、使用頻度の高いものは、前項の「ATOKに単語登録をし、ユーザ辞書をテキスト保存する」で触れたように単語登録をすることも有効であるが、各種記号類のように言語化しにくいものや一定の期間しか使わないものなどは、このクリップボード・ユーティリティに登録しておくほうがいい。なぜなら、この常駐データは、ユーティリティによっては、画面にドラッグしたり、クリックするだけでカーソル位置に簡単に貼り付けることができるから、場合によっては単語登録から呼び出すよりも便利なこともあるからである。Windows用のクリップボード・ユーティリティとしてはToClip for WindowsおよびQTClipをお奨めする。これらもやはりフリーウェアのソフトであり、使い方については別項で説明する予定である。
 それからテキストファイルを印刷するための印刷ユーティリティとしてWinLPrtというツールは重要である。これは一種の鋳型のような書式をいくらでも準備しておいてテキストデータをそこに流し込めば、簡単に印刷できるようにできるソフトである。秀丸エディタのプラグイン・ソフトに秀丸パブリッシャーというユーティリティもあって、秀丸の印刷機能を補完することができる。またQXエディタのように印刷書式をいくつも用意してデータを印刷できるようにしているツールもある。しかしWinLPrtはそういうツールに依存しないでテキストファイルなら自由に印刷できるというのが最大の利点である。このツールについても別項で説明する予定である。
 もうひとつ、これはユーティリティといったレヴェルではないが、Microsoft Officeを代替できる無償のアプリケーションで、OpenOffice.orgというLINUXベースのアプリケーションもある。これをインストールし、たえずヴァージョンアップしておけば、Microsoft Officeのデータをすべて読み込むことができ、書き換えることもできる。つまりOfficeをオープンにするすぐれたソフト・パッケージなのである。これさえあれば、Microsoft Officeなどわざわざ買う必要はないのである。
 最後に、プログラムやファイルまたはフォルダの圧縮と解凍をためのユーティリティというものが必要である。プログラムのダウンロードやメール転送したり受け取ったりするときにデータの圧縮や解凍が必要になるが、そのデータを圧縮したり解答するためにはそうしたユーティリティが必要である。これはやはりフリーウェアのものが多いが、なかでもLhacaというユーティリティが使い勝手がよい。このツールのショートカットをデスクトップにおいておけば、圧縮ファイルをドラッグ&ドロップして解凍したり、ファイルやフォルダをドラッグ&ドロップして圧縮することが簡単にできるのである。これについても別項で説明しよう。
 ほかにも有効なユーティリティ類はいくらでもあろうが、当面、執筆と編集のために必要と思えるものはおよそ以上のもので十分であろう。
(2009/9/23)

 パソコンでの入力をより快適に、より効率よくおこなえるようにするためには、よく使う単語またはフレーズ、変換が面倒な固有名詞や記号を単語登録することをお奨めする。たとえばわたしは自分の名前を「にし」と入力すれば「西谷能英」が出るように登録している。こうしておけば、なにか登録画面で自分の名前を入力しなければならないようなときに簡単である。それでなくとも自分の名前はなにかと入力する必要が多いので、これはまず初めにやっておくべきことである。OSの再インストールなどをしなければならなくなったときなど、できるだけ早めにこの登録だけでもすませておけば、ずいぶんと手間を省くことができる。
 Windowsの場合、MS-IMEという入力メソッド(Input method)が標準装備されている。入力メソッドとは、かつてはFEP(フロントエンドプロセッサ)とも呼ばれていたプログラムで、キーボードからの入力を変換してパソコンに受け渡す機能をもっている。MS-IMEは日本語の変換用の入力メソッド、日本語入力システムであるが、日本語学習能力などにおいてかならずしも使い勝手がよくない(というか、わたしは最初からあまり使っていない)ので、できればジャストシステムが開発した純日本産のATOK(エイトックと呼ぶ)を使うことをお奨めしたい。(*)以下ではこのATOKでの単語登録の方法、登録後の管理の方法を説明する。
 まず単語登録の方法であるが、文章中の単語またはフレーズをコピー(Ctrl+C)してからCtrl+F7を押して単語登録画面を呼び出すか、初めからCtrl+F7を押して単語登録画面を呼び出し単語ボックスに必要な単語またはフレーズを入力する。つぎに「読み」ボックスにその単語またはフレーズを呼び出すための適当な読み(自分で忘れない程度に簡略化したもの)を入れる。そして「品詞」ボックスのプルダウンメニューから適切な品詞またはジャンルを選択して「OK」する。これで単語登録は完了である。なお、すでに登録されているものを再登録しようとするとアラートが出て不要であることを教えてくれる。
 つぎに単語登録した辞書ファイルの編集(修正と削除など)について説明する。
 ATOKパレット(**)を最大化すると表示されるアイコンのなかから「辞書ユーティリティ」をクリックして表示されるダイアログでも単語登録はできるが、ここではより多くのことができる。
 まずすでに登録された単語またはフレーズを修正したり削除するには、「一覧編集」タブで「検索開始読み」に読みを入力し、検索ボタンを押すと該当するものが下の「単語一覧」画面に一覧表示されるので、修正または削除するものを選択する。削除する場合には「削除」ボタンを押すと確認の画面が出てくるのでほんとうに削除するなら「はい」、しないなら「いいえ」を押す。修正する場合は「修正」ボタンを押して「読み」を変えたり「品詞」を修正する。
 つぎに「一覧出力」タブを使って、登録した単語またはフレーズの一覧をテキスト出力し保存することができる。こうしておけば、自分が登録した単語またはフレーズにどういうものがあり、どういう読みで呼び出すことになっているかを覚えておくことができる。この場合、「出力ファイル」ボックスに適当な名前(たとえば「ATOKユーザ辞書.txt」)を入れ、下の「種類」のなかの「登録単語」だけをチェックして「実行」をクリックすればよい。このファイルはデフォルト設定では「Documents and Settings」フォルダのなかのアカウント名の下の「Application Data」~「Justsystem」~「ATOK**」フォルダに書き込まれる。できればこれを自分用のデータフォルダに移動しておきたい。すでにテキスト保存したものがあれば、そのファイルを「参照」ボタンを押して検索し、上書き保存すればよい。
 さらにこの「ATOKユーザ辞書.txt」をたえず更新して保存しておけば、パソコンを変えたりOSの再インストールなどをしたときには、このテキストデータから読み込むことで一挙にこれまでの単語登録が再現できる。そのための方法はこのATOKパレットの「一括処理」タブで「単語ファイル」にこのテキストデータを「参照」から呼び出して「登録」をクリックするだけである。
 ちなみにわたしはATOKユーザ辞書に1000近くの単語またはフレーズを登録している。もちろん、このなかには使わなくなったものもかなり含まれており、整備すれば半分ぐらいになるかもしれない。ただ仕事柄、書名なども『』付きで登録してあるので、どこかで役に立つこともあるかもしれないので、削除していないものも多い。とにかく慣れれば、入力の補助としてこれほど役立つものもないのである。ぜひともこの手法は習得してもらいたい。

(*)なお、わたしのATOK環境はいまだにATOK15というかなり古いものなので、最新の機能には疎いところがある。間違いがあったらご教示を願いたいが、基本的な使い方のポイントは変わっていないはずである。
(**)モニタの右下にATOKアイコンが表示されているときは、クリックして「トレイから出す」を選び、パレットが省略表示になっていれば、パレット右端にある「最大化」の三角印をクリックすると表示される。
 ここまでの記述は、通常のパソコンでの仕事を効率よく、また気分よく進めていくためのちょっとした小技の類であった。もちろん知っておいて損はないものであるが、これらは「窓の手」を除けば、すべてウィンドウズOSに付属している機能である。裏技というほどのものでもない。それでも意外とひとは知らないのではないだろうか。
 さて、つぎに必要なのは、通常さまざまな文字入力場面などで呼び出されるテキストエディタを導入する問題である。ウィンドウズではもともと「メモ帳」という簡単なテキストエディタが付属しており、単純な入力ならこれでもかまわないが、本格的にテキスト処理をするつもりならこれではまったく不充分である。ワードパッドというMicrosoft Wordを元にした簡易ワープロも付属しているが、やはりこれでも最小限の仕事しかできないことに変りはない。起動が遅くて使い勝手の悪いワープロなどを使わずに、起動も早くサクサクと動くテキストエディタ(略してたんに「エディタ」とも呼ぶ)を導入するのが一番である。
 さて、そうなるとどのテキストエディタがいいのか、という問題になる。通常こうしたテキストエディタは量販店のソフト・コーナーなどに売っているものではない。値段が安い(無料のものもある)から量販店では商売にならないからである。こうしたツールは、ほかのジャンルの多くもふくめて、すべてインターネットでダウンロードするのが一般的である。使ってみて気に入れば、必要な料金を支払えばいいのである。ヴァージョンアップなどがあっても原則的に無料でヴァージョンアップ版をダウンロードし、インストールし直せばよい。しかもふつうは簡単に上書きインストールできるので、設定などで面倒な修正なども必要ない。有料のものは「シェアウェア」と呼び、一定期間のお試し期間内に所定の方法で支払いをすませれば、製作者側からインストールにあたってのパスワードかインストールキーのようなものを知らせてくれるので、それを登録するだけであとはそのまま使える。ヴァージョンアップごとに新たな金額を必要とさせられる市販ワープロなどとは初めから考え方というか志がちがうのである。
 テキストエディタと言ってもインターネットで検索してみれば山ほどあることがわかるが、わたしがお奨めしたいのは、多機能かつ高機能なエディタである。ここで高機能とは、使うひとそれぞれの好みにあわせて使い勝手を自由自在に変更できるカスタマイズ性、正規表現やgrep機能をふくんだ検索・置換機能、マクロ機能の充実などのことである。ワープロではとうてい実現できないことがテキストエディタではいくらでも実現できるのである。テキストエディタとはワープロの簡易版どころではなく、ワープロの余分な機能を不要とし、文章のプロとして使いこなすべき究極のツールなのである。もちろんこのツールによって作られたデータはテキストファイルであるから、どんなツールからもそのまま利用可能であることは言うまでもない。
 ウィンドウズでは秀丸エディタ(斉藤秀夫氏作のシェアウェア)、LightWayText(山下道明氏作のシェアウェア)、QXエディタ(新井健二氏作のシェアウェア)がとりあえずベストだろう。ほかにもいろいろあるからそれぞれの好みでダウンロード~インストールをしてもらっていい。わたしが日常的にこれらのテキストエディタを使っていて、それぞれに特徴があり、使い分ける必要があるので併用しているまでである。とにかくどれかひとつでもまずはインストールしてみてほしい。それを「メモ帳」に代わって標準エディタとして設定しておけば、テクストファイルはすべてこのエディタのアイコンで表示され、ダブルクリックでファイルをそのエディタで起動することができるようになる。それぞれの使い方はマニュアルを参考にしてほしいが、わたしが推奨する使い方は後述する。(*)
 ここではそれぞれのテキストエディタの入手先を以下に示しておこう。
◆秀丸エディタ:http://hide.maruo.co.jp/
◆LightWayText:http://homepage.mac.com/lightway/LightWayText.html
◆QXエディタ:http://www2k.biglobe.ne.jp/~araken/

(*)秀丸エディタにかんしてはすでに『編集者・執筆者のための秀丸エディタ超活用術』(翔泳社、2005年9月刊)にくわしい記述をしてある。ただし、この版では秀丸のv.5までしか対応していないので基本的には十分な意味はあるはずだが、新しいヴァージョンにたいしてはさらなる検討が必要かもしれない。
(2009/9/6)

 Windows XP以降のウィンドウズOSは使い勝手が悪くなったというのが一般的な評価である。「スタートメニュー」もそのひとつである。デフォルトではフォルダやアプリケーションがたいして脈絡もなくグループ分けされているが、はなはだ使いにくい。わたしはWindows 2000以来の「クラシック[スタート]メニュー」を使っている。このほうが馴染みもあるせいか、圧倒的に使いやすい。Windows Vista以降はさわったことがないのでよくわからないが、いずれにせよ、従来の「スタートメニュー」が使える環境なら、それに直してカスタマイズすることをお奨めしたい。
 まず、画面左下の「スタート」ボタンの上で右クリックして「プロパティ」を選択すると、「[スタート]メニュー」タブと「タスクバー」タブがあるので、「[スタート]メニュー」タブで「クラシック[スタート]メニュー」のラジオボタンをクリックする。こうしておくと「スタートメニュー」から必要なアプリケーションやファイルをポップアップメニューから一発で起動できるようにすることができるのである(この点のくわしい記述は後述の「『スタートメニュー』はすべての引出し」のところで展開する予定)。
 そこでさっそく右側にある「カスタマイズ」ボタンをクリックする。「[スタート]メニューの詳細オプション」で必要なオプションにチェックを入れる。
 ここでは「[スタート]メニューに項目をドラッグ/ドロップできるようにする」にチェックを入れると、フォルダやファイルで「スタートメニュー」に追加したいものがあれば、ドラッグ&ドロップでそれらのショートカットやコピーを作ることができる。(*)
「[スタート]メニューに小さいアイコンを表示する」にチェックを入れると、表示を効率的に並べやすくできる。
「コントロールパネルを展開する」を表示しておくと、「スタートメニュー」のポップアップメニューのなかに「コントロールパネル」がサブメニュー付きで表示されるので、使いやすくなる。
 それ以外にはとくにチェックを入れる必要はないが、ひとによっては「お気に入りを表示する」「ネットワーク接続を展開する」「プリンタを展開する」「マイドキュメントを展開する」「マイピクチャを展開する」などにチェックを入れてもいいだろう。

(*)この場合、マウスの左側でドラッグするとドロップした場所にショートカットを作るだけだが、右側を使ってドラッグするとドロップした場所で「コピー/移動/ショートカット作成/キャンセル」を選択処理することができる。
(2009/9/2)

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