以前から気になっていたことだが、アマゾンでの本の売れ方を見ていると、「マーケットプレイス」経由のものがどんどん多くなってきている。これは「Amazonアソシエイト」という画面で自社の売上げレポートを見ているとわかることだが、要するに読者が自社のホームページからアマゾンに移って本などを購入するとその金額にたいしてアフィリエイトというかたちで紹介料が入る仕組みであって、そのさいに何をどこからいくらで買ったかもわかるという仕組みなのである。この場合、自社の本以外でも、他社の本、場合によっては本以外のグッズでも対象となるので、高額商品の場合などありがたいこともある。
ともあれ、自社の本であれ他社の本であれ、購入先が「Amazon.co.jp」となっていれば定価販売なのであるが、「マーケットプレイス」となっているといわゆる中古販売で、アマゾンを舞台として出品者が通常は低価格で販売していることになる。この割合がどうやらいまは半分どころか7~8割になってきているのではないか。これはジャンルや価格によるのかもしれないが、その割合はどんどん上がってきているように思えてならない。これはていのよい割引販売でアマゾンは場所を提供しているだけだというだろうが、実際には中古販売に手を貸しているのと同じことで再販制にたいして問題があるのではないかとも思う。出版人はこのことになぜかあまり言及していないようだ。物言えば唇寒し秋の空、ということか。出品者は一種のショバ代を払うだけで済み、この方法で荒稼ぎをしているひともいるらしい。出版社としてはどうにも困ったことであるが、これもブックオフと同様、出版物のリサイクルの一種なのであろう。
このことはすでに成毛眞が「ネット書評家のお勧め本をインターネットから時価で買うという時代になりつつある」(「変わる『本と私の時間』」「図書」2010年12月号)と書いているとおりである。成毛はこういうネット書評家を「本のキュレーター」と呼んでいるが、影響力のほどはともかく、こういうキュレーターもどきが本について書いているページがネット上にはいくらでもある。わたしの本もいろいろ言及されているのをときに読むことはあるが、はたしてこんなものがひとの購買意欲をそそるものだろうか、と思われるシロモノがほとんどだ。それはともかく、アマゾンの表面上の売上げのほかに、それの倍以上のマーケットプレイス市場があるとすると、これはいよいよ出版界の正常ルート(出版社→取次→書店→読者)の弱体化もむべなるかな、ということである。そういう矢先に、小取次の明文図書が7月末の自主廃業を決めたのももはや偶然でもなんでもないのである。