60 最近の「人文会ニュース」がおもしろい

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「人文会ニュース」がなかなか充実している。
 昨年9月刊の113号では新宿紀伊國屋書店本店の吉田敏恵さん(MD=マーチャンダイザーとか)のインタビュー「人文書担当としての試み2001-2012」を平凡社の根井さんがうまくまとめている。〈じんぶんや〉の試みなど、とくに目新しいわけではないが、最近の紀伊國屋書店の取組みをわかりやすく引き出している。
 吉田さんは人文書にたいしてもうすこし「ビジネス」を意識したほうがいいんじゃないかと、著者、編集者、出版営業にたいして注文をつけている。わたしなどにとっても耳の痛いところだ。書名の付け方などにもうすこし工夫したほうがいいんじゃないかと思うことはしょっちゅうある。なにもすべてわかりやすく売れやすくというばかりが能じゃないが、読者に内容が伝わりにくいもの、せっかくそのものズバリで端的な書名が付けられるのにわざわざトーンダウンさせてしまうものもある。本は一冊一冊が勝負なので、あとで修正がきかない。このあたり書店現場のひとに意見を聞くのもいいのだろう。
 吉田さんは書店現場と編集者のコミュニケーションがもっとあればいいのにとも主張している。これはわたしの持論でもあって、そう言えば、いつぞやの東京国際ブックフェアの新刊説明会のあとの懇親会で吉田さんにもそのことを力説した記憶がある。そうなんだよね、もっと交流してすこしでも売れる本を作ること、そうした本をどうやって売ってもらったらいいか考えることを進めていかなくちゃいけないんだ。
 さて、次のできたばかりの114号では熊本の長崎書店(長崎の熊本書店じゃないよ)の長崎健一社長が「『老舗書店』の矜持とチャレンジ」といういい文章を書いている。「日頃の商品情報の収集と分析、販売情報であるスリップの読み込み......そこから仮説を組み立て、検証していくという地道な仕事の繰り返しを、多忙を言い訳にせず可能な限り丁寧に行なっていきたい」と。すばらしい。こういう書店人(しかも若い)が出てきたことに目を覚まさなければいけない。ここもむかしはたしか未來社の常備店でもあったな、と思い出す。ついでに昨年のいつごろだったか、この若社長と人文担当の児玉さんが来社されて、しばらく話をする機会があった。わたしも持論の「棚はナマモノ」説を話していささか辟易とされたかもしれないが、もうひとつ偉そうに、人文書の棚の作り方のヒントとして、人文書が本のネットワークであること、その指標としてコアになる本の参考文献や引用文献などから本同士の連繋が探り出せること、その関連性をつないでいくような棚を作っていくのも簡便な方法ではないか、などとしゃべってみたが、その後、なにか実践してみて役に立つようなことがあっただろうか。そんなことを思い出して書いておきたくなった。(2013/1/23)

(この文章は前日に「西谷の本音でトーク」で書いた同題の文章を転載したものです。)

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