50 出版業界が半減期に入るのは時間の問題

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 出版業界紙「新文化」2951号(2012年9月20日)の「出版概況」を見ていて、あらためて出版不況の進行の度合いを確認することになったが、売上げの減少は言うまでもなく、ほかにもいくつか気になるところがあった。わたしに関心のあるところを3点だけにしぼって見ておこう。なお、統計は2011年から遡ること最近10年分である。
 まずは書籍の新刊発行点数とその平均定価の問題である。昨年(2011年)は新刊点数が取次のデータでは75, 810点で平均価格が1109円。問題は、平均価格(平均定価)が10年連続で低下しつづけていることである。これは新書と文庫の発行点数が頭打ちになっていることから言って、全体に値下げ傾向、すなわち軽薄短小化していることがよくわかる。
 つぎに書籍発行部数をみると、13億1165万冊と昨年より3%ダウンで毎年かなりの減少傾向にある。ピークの1997年には15億7354万冊だったから、それにくらべると16. 6%減である。この年の新刊発行点数は62, 336点だったから、初版部数もふくめて一般に1点あたりの部数がさらに大きく減少していることになる。これは売上げの減少と平行関係にあるとみてよいだろう。
 わたしの計算では、年間売上げが2兆6980億円でピークを記録した1996年の新刊発行点数は60, 462点だったのにたいして、2009年には新刊が80, 776点にもなっているにもかかわらず、売上げは2兆409億円。1996年にくらべてざっと点数で133%、売上げは75. 6%。1点あたりの売上げは56%になっている。この傾向はさらに進んでいると思われるので、数年のうちに1点あたりの売上げはピーク時の半分以下になるだろう。つまり出版界は半減期を迎えているのである。
 もうひとつわたしが気になるのは、書店の分類別売上げのなかで「専門書」のマイナス成長が一番高いことである。全体で4.3%減のところ「専門書」は11.0%減になっている。もっともなにをもって「専門書」とするかによってかなり差があるのでいちがいに否定的になるべきではないかもしれないが、やはりこういうかたちでほんとうの専門書が書店から閉め出されているのではないかと危惧せざるをえない。(2012/9/26)

(この文章は「西谷の本音でトーク」で掲載した同題の文章を事実確認と推敲のうえ、転載したものです。)

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