トーハンのデジタル事業担当役員でデジタルパブリッシングサービス(DPS)の社長に返り咲いた鈴木仁さんが電子書籍担当のデジブック林社長とともに来社され、これからのオンデマンド本の構想について話を聞く機会があった。
ひとつにはこれまでのDPSのオンデマンド復刊事業のさらなる発展として、出版社の負担を軽減するため桶川のQRセンターの一角にDPS専用の在庫を預かるスペースを確保して、出版社のオンデマンド製作にかんする発注、郵送、出荷等のコストと時間を圧縮するという提案である。これまで出版社はオンデマンド注文を受けると、まずDPSへの発注作業、納品の確認と倉庫等への発送作業(郵送料の発生)、さらには出荷倉庫での在庫管理、出荷作業(伝票起し、出荷料の発生)などの手間とコストをかけて1冊ごとの注文に応じてきた。それをDPSが注文を受けたあとは製作から管理、出荷までをすべて一貫しておこなうという合理化案なのである。
これには、もうひとつセットになった話がある。これまでは出版社の判断で一冊ごとのオンデマンド製作あるいは場合によっては小部数のショートラン印刷と呼ばれる選択肢があって、出版社が後者の場合には先行投資的に注文数以上の製作をして在庫管理をおこなってきた。鈴木案では、これもふくめて在庫管理をし、なおかつ製作費は注文があるごとに出版社へ請求するだけでいいのではないかというもので、これは出版社にとってはありがたい話になる。オンデマンド機は面付けが4面なのでもっとも効率がいいのは4冊単位ということになり、1冊あたりのコストも若干だが軽減される。そうなればそのコストもいくらかは出版社に還元できるという、さらに具合のいい話なのである。つまり出版社はあるアイテムの注文が1冊くれば、4冊作ってもらい、3冊はQRセンターでの保管にまわしてもらって、とりあえずは1冊分の製作費の請求を受ける、残りは売れるたびに払っていくという仕組みである。オンデマンド本の場合はさほど回転率がいいわけではないから、出版社の負担もそれだけ軽減され、なおかつ在庫があるあいだは出荷がすぐできるという利点も出てくるのである。
こうした鈴木案にわたしは原則的に大賛成で、通常重版がやりにくい専門書・学術書におけるオンデマンド復刊の必要性をさらに後押ししてくれるものとなる。ついつい面倒さが先に立って新しいアイテムの準備を怠ってしまいがちなオンデマンド本の拡大もこれでやりやすくなる可能性がある。こういう構想は同じような悩みをかかえる専門書系出版社にとってはおおいなる福音とも言えるもので、一社だけでなく、たとえば書物復権8社の会のようなところがある程度まとめてアイテムを拡充することになれば、これまでよりはるかに大きなマーケットの開拓につながることになるだろうし、読者の不満にもいくらかでも応えることができるようになる。それにDPSとしても業量が増えることによって1冊あたりの製作費用や移送費用なども軽減できることにつながり、すべてうまく回転することが可能になる。
こうした発想は、鈴木仁さんがたんに業務拡大のためだけでなく、いまの出版界になんらかの貢献をトーハンとしてできることはないか、という文化論的立場から出てきたもので、この意気やよし!とするべきなのである。ちかくわたしは書物復権8社の会などに具体的な提案をしてみようかと思っている。(2012/2/15)
ひとつにはこれまでのDPSのオンデマンド復刊事業のさらなる発展として、出版社の負担を軽減するため桶川のQRセンターの一角にDPS専用の在庫を預かるスペースを確保して、出版社のオンデマンド製作にかんする発注、郵送、出荷等のコストと時間を圧縮するという提案である。これまで出版社はオンデマンド注文を受けると、まずDPSへの発注作業、納品の確認と倉庫等への発送作業(郵送料の発生)、さらには出荷倉庫での在庫管理、出荷作業(伝票起し、出荷料の発生)などの手間とコストをかけて1冊ごとの注文に応じてきた。それをDPSが注文を受けたあとは製作から管理、出荷までをすべて一貫しておこなうという合理化案なのである。
これには、もうひとつセットになった話がある。これまでは出版社の判断で一冊ごとのオンデマンド製作あるいは場合によっては小部数のショートラン印刷と呼ばれる選択肢があって、出版社が後者の場合には先行投資的に注文数以上の製作をして在庫管理をおこなってきた。鈴木案では、これもふくめて在庫管理をし、なおかつ製作費は注文があるごとに出版社へ請求するだけでいいのではないかというもので、これは出版社にとってはありがたい話になる。オンデマンド機は面付けが4面なのでもっとも効率がいいのは4冊単位ということになり、1冊あたりのコストも若干だが軽減される。そうなればそのコストもいくらかは出版社に還元できるという、さらに具合のいい話なのである。つまり出版社はあるアイテムの注文が1冊くれば、4冊作ってもらい、3冊はQRセンターでの保管にまわしてもらって、とりあえずは1冊分の製作費の請求を受ける、残りは売れるたびに払っていくという仕組みである。オンデマンド本の場合はさほど回転率がいいわけではないから、出版社の負担もそれだけ軽減され、なおかつ在庫があるあいだは出荷がすぐできるという利点も出てくるのである。
こうした鈴木案にわたしは原則的に大賛成で、通常重版がやりにくい専門書・学術書におけるオンデマンド復刊の必要性をさらに後押ししてくれるものとなる。ついつい面倒さが先に立って新しいアイテムの準備を怠ってしまいがちなオンデマンド本の拡大もこれでやりやすくなる可能性がある。こういう構想は同じような悩みをかかえる専門書系出版社にとってはおおいなる福音とも言えるもので、一社だけでなく、たとえば書物復権8社の会のようなところがある程度まとめてアイテムを拡充することになれば、これまでよりはるかに大きなマーケットの開拓につながることになるだろうし、読者の不満にもいくらかでも応えることができるようになる。それにDPSとしても業量が増えることによって1冊あたりの製作費用や移送費用なども軽減できることにつながり、すべてうまく回転することが可能になる。
こうした発想は、鈴木仁さんがたんに業務拡大のためだけでなく、いまの出版界になんらかの貢献をトーハンとしてできることはないか、という文化論的立場から出てきたもので、この意気やよし!とするべきなのである。ちかくわたしは書物復権8社の会などに具体的な提案をしてみようかと思っている。(2012/2/15)